田丸さんは、やはり有名な米原万里さんのお友達なのは、それぞれの書かれた本にお名前がよく出るので知っていましたが、田丸さんのあだ名「シモネッタ」が、米原さんがつけたものとは初めて知りました。
前に同じ著者の書いたものを読んだとき、うろ覚えではあるのですが、息子さんに「通訳は嘘つきの商売なんだからね」とかおっしゃっていました(^^;)。
これを読むと、ホントだな、と。
初めての通訳としての仕事は35人のイタリア人観光客のガイド。緊張してバスに乗っている著者におばさんが聞いてきます。「あの建物は何?」
著者は、「鉄鋼会社山本の本社ビルです」と答えるのですが、まったくのウソ!
先輩に、「客から何か聞かれたら、絶対に「知らない」って言うな。考えて必ず何か言うんだ」とのアドバイスをもらっていたからなんですねぇ。
その後も数々の失敗のおもしろエピソード満載です。
特に発音に関する失敗は数知れず、地名や人名の形容詞形はお手上げだそうです。
また、同時通訳にはパートナーがつくわけですが、その人の資質が問題になるとのこと。
パートナーとしてのあらまほしき資質の第一は、「耳が良いこと」。
次に、「早く読みやすい字を書くこと」。
ただ、パートナーがきれいな字を書いたとしても、通訳者の無知が悲惨な結果を生むこともあるんですねぇ。
たとえば、「田毎の月」を「たまいのつき」、「妙なる音色」を「みょうなる・おんしょく」などと読まれては、パートナーもなすすべがないでしょうね(^^;)。
また訳すのに困る日本語も多い。
「前向きに善処します」「しめしがつかない」「それなりのご覚悟があってのことなのでしょうね」などなど。
著者が頭にきたことがあります。ある27歳の日本人振り付け師が言ったことばです。
彼女は10年間アメリカでダンスの研鑽につとめ、英語には自信があったのでしょう。新聞のインタビューに答えて、「英語は、頼まれれば同時通訳もできるレベルです」と何気なく言うんですね。
田丸さんは、次のように反論しています。
ここには、通訳の仕事に対する一般人の認識が如実に表れている。つまり、一般の人は、外国語を流暢に話せさえすれば、誰でも通訳ができると思っているのだ。
外国語を聞いて理解し、自分が言いたいことを伝える能力と、他者の意見を他者のために的確な日本語に置き換える能力、この二つがまったく別ものだということは、残念ながら殆ど理解されていない。
同時通訳をする時は二人体制でするそうですが、他人の言うことを訳すのは、極度の集中力が要求される「脳」作業なため、20分ごとに交代するそうですね。
それでも時にはその脳がフリーズしてしまうことがある。そうすると通訳者は突然押し黙ってしまう。突然マイクを渡されたもう1人がどれほど焦るか、想像がつきます(^^;)。
そういう通訳に関すること以外にも、イタリア人の気質についておもしろエピソード(ママ大好き、美醜を異常に気にする、などなど)がいっぱい書かれているので、興味のあるかた、お読みになってみては?
今日は爽やかな朝を迎えました。でもきっと気温は上がるのかな?
夕方、妊婦を乗せてお茶の水の歯科まで走ってきます!