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Channel: ハーちゃんの「ゆらゆら日記」
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米原万里著 「打ちのめされるようなすごい本」

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せんだって読んだ中島梓さんの闘病エッセイの本に「米原万里さんの闘病記」として紹介されていた本です。




ですが「闘病記」なるものはたったの15ページ! ほとんどは書評で、400冊以上の本が紹介されています。

その「闘病記」ですが、著者は2003年に卵巣がんを摘出、その後、左鼠頸部リンパ節へ転移。抗がん剤治療を避けるためにがん治療に関する書籍を読みあさり、さまざまな代替療法にも挑戦するのですが、結果的に抗がん剤治療を受けることになります。

その間の苦闘の日々については「万が一、私に体力気力が戻ったら『お笑いガン治療』なる本にまとめてみたいとおもうほどに悲喜劇に満ちていた」そうです。

その悲喜劇のごく一部がここでも紹介されているのですが、まずがん関係の本を10冊挙げてそれについて意見を述べています。

代替療法なるものに関してはまず「活性化自己リンパ球療法」にトライしていますが、結果として再発してしまい、著者には予防的効果をまったく発揮しなかったんですね。

次に「温熱療法」。がん細胞が42度で死滅することを利用する療法です。不安ながらも著者は試すことにします。患部のある箇所の上下両面から液体の入ったマットをあて、徐々に温めて行くのですが、著者は39度で音を上げてしまいます。

「部分麻酔を使えないものだろうか」と訊ねると「あなたには向かない治療法だからもう来るな。払った費用は全額返す」と言われてしまったそうです。

時期的にみてたぶん著者が最後にトライしたと思われるのが「刺絡療法」。注射針で全身の治療ポイントを浅く挿して副交感神経を刺激していく療法だそうです。

8回ほどこの療法を受けた著者は、効果に疑問を持ち始め、治療直後の血液検査を依頼。結果は良くありません。そこで医師に問いつめると「いちいちこちらの治療にいちゃもんをつける患者は初めてだ。治療費全額返すから、もう来るな」という展開になったそう。

まぁ、著者とのやりとりの中でこういった応対になったのかも知れません。でも藁にでもすがりたいがん末期の患者に対しても、キビシい言葉を投げかけるものなんですねぇ。

この文章が「週間文春」に載った1週間後、彼女はこの世を去ります。がんの末期の体全体の不都合がどれほどのものか、食事から排泄にいたるまで一筋縄ではいかなかったと思われます。その状態で最後の最後まで文章を書き続けるという宿命のようなもの。作家の業とも言えるのでしょうか。



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