この著者の寺地さん、この本が2作目だそうです。第1作目が、「ビオレタ」 というタイトルで、第4回ポプラ社小説新人賞受賞作になったらしいです。なんでも、満場一致で選ばれたとか!
「ミナトホテルの裏庭には」 の主人公は 「木山芯輔 (きやましんのすけ) 」、25歳、サラリーマン。
祖父に 「ミナトホテルに住む湊篤彦を訪ねるべし」 と命じられてやってきたのだが、挨拶をする間もなく階段から転げ落ちてきた湊篤彦!
足が変な方向に曲がっているところからすると骨折したらしい。
芯 (芯輔はみなからこう呼ばれている) は救急車を呼び篤彦とともにそれに乗り込むのですが、篤彦は痛みのあまり気を失ってしまいます。
祖父がなぜ芯をミナトホテルに行かせたのか。それは、ミナトホテルの元の所有者、篤彦の母、陽子の一周忌と関係がありました。一周忌をミナトホテルの裏庭でやらなければならない理由があったから。
ところが裏庭に入るためのカギ (巨大な錠前らしい) がどうしても見つからないと言う。息子である篤彦は 「母の部屋のどこかにあるはずだが見つけられない。どうも自分がやると、遺品の整理どころがますます部屋が散らかっているようだ」 と言うわけです。
芯はそんな事に巻き込まれたくはなかったのですが、「首尾よく見つかった金一封をさしあげる」 という祖父のことばにカギ探しを了承することになります。
その後、湊篤彦から 「ネコ探し」 に 「ホテルの受付のアルバイト」 まで頼まれてしまった芯。
仕事が終わった後、「カギ探し」 「ネコ探し」 「受付」 のみっつに奔走します。
一般的なホテルのはどこか違うナゾめいた 「ミナトホテル」 の内情もわかってきます。
宿泊と言うよりは住んでいると言っていい 「桐子」 とむすこの 「葵」。湊篤彦との関係はどうなる...。
芯の会社で派遣社員として働く 「花岡月子」。こちらに対しては主人公、芯の気持ちの変化が...。
なんて言うのか、芯以外はいろいろ事情あり、の人々が登場するわけですが、芯がごく普通の男 (こう言って良いのかな?) だからか、淡々とした文章で物語が進行して行く感じがしました。
芯と言う男性の心情にも感情移入できました。
登場人物もすぐに私の頭の中で映像化されたし (^^)。
これが2作目と言うことですが、これからも期待できそうな作家さんだと思いました。
「ミナトホテル」 の裏庭は、どうも 「秘密の花園」 みたいな庭らしいです (^^)。
本でも映画でもドラマでも、最初に批評などの情報が無いほうが良いですね。この本も、月刊誌にどのように紹介されていたかをすっかり忘れて読んだのは正解でした。