ネタバレありますので、これからお読みになるかたはご注意ください。
9巻ずっと読んでいて、主人公の女料理人 「澪」 にはツライこと、嬉しいこと、いろいろありました。いちばんツラかったのは、武士の小松原の求婚を受け入れたのに、やはり料理人として生きていくことを選択した時だったのではないでしょうか。
その後、料理番付で張り出し大関になるという名誉を手にした澪ですが、読んでいるほうは、今度は医師の源斉との仲がどうなるのかも気になって、お互いの気持ちを決して伝えあわない態度にやきもき (^^;)。
大坂の大洪水で別れ別れになった大切な幼なじみ、現在は吉原の太夫、「野江」 を身請けする4000両を工面しようとする澪でしたが、こちらも意外な結末が待っていました。
澪を取り巻く人々とのあれこれ、季節をしっかり感じとっていた江戸時代の人々の暮し、その季節ごとに工夫する澪の料理...。
それにしてもこのシリーズは本当に泣かされるお話しでした。
最後のこの本では、こんな場面で涙がつうつうと流れてしまいました。
澪と源斉が俎橋を渡る。二人そろって心星 (北極星) を見上げる。その場面。
あなたが、と源斉は声を低めて、躊躇いがちに続ける。
「あなたが、何処かへ行ってしまうのではないか、と」
あとは言わずに、軽く首を振った。済みません、まだ酔いが残ってしまって、と断って、源斉は澪に頭を下げ、そのまま足早に俎橋を渡り切った。
はっきり、「好きだ」 「愛してます」 などとは言わないんですねぇ。お互い、言葉以外のもので互いの気持ちを推し量る...。こういうの時代遅れかも知れませんが、好きですねぇ (^^)。
最後はハッピーエンドです!
本の終わりにこんな料理番付表 ↓が!
東の大関の 「つる家」 は、澪が江戸で料理修行をしていた店。西の大関の 「みをつくし」 は、大坂で澪が出したお店なのですね。時は文政十一年となっています。つまり、澪と吉原の太夫という境遇から自由の身になった野江がふるさと大坂にもどってから11年経った時のもの。
そしてまん中の下段の 「勧進元」 に 「日本橋柳町 一柳改メ 天満一兆庵」 となっていて驚きました。これだけで、読者は 「ああ、そうなったのか」 とわかるはず。
特別付録 「みをつくし瓦版」 が巻末にありました。登場人物のその後が知りたい。続編は出ないのですか? という問いに著者は以下のような返事をしています。
前巻での告知以降、このご要望を沢山お寄せ頂いています。登場人物のひとりひとりに深い愛情を抱いて頂き、作者として心から感謝いたします。長くお待ち頂くことになりますが、それぞれのその後を一冊にまとめて、特別巻として刊行させて頂くことでお気持ちに添えたら、と考えています。
とのこと。いつになるのでしょうか? ぜひ出版してほしいです!
おまけ: 今日のスカイツリー。墨田区石原付近。台風18号の雨の中、ほとんど姿がわかりません(^^;)。