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Channel: ハーちゃんの「ゆらゆら日記」
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半藤末利子著 「漱石の長襦袢」

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この本を知ったのは、先々週に読んだ、池内紀著「本は友だち」で、でした。

「本は友だち」に出ている作品のうち、「これは」と思ったものを数冊借りました。

借りた作品は

 横山良一著 「山頭火と四国遍路」
 塚谷裕一著 「植物のこころ」
 森於菟著「耄碌寸前」          
 カレル・チャペック著「カレル・チャペックのごあいさつ」  
       
です。

でも、最後まで読んだのは「漱石の...」「山頭火と...」「植物の...」でした。あとの2冊は途中で挫折...( ̄Д ̄)ノ。

この本の著者、半藤末利子さんは、漱石の長女の娘さん、つまり漱石の孫になりますね。ちなみにご主人は、歴史家半藤一利さんです。

私は漱石の本、きちんと読んだ覚えがありません(≧∇≦)。有名だから、タイトルに何度も触れていると、読んだ気になってしまうんでしょうか?

実生活については、国費留学生としてロンドンで過ごすうちに神経衰弱になったらしい、どこかの温泉地で大量の血を吐いたものの一命は取りとめたらしい、鏡子夫人は悪妻と言われているらしい、なんてことは知っていましたが。

この本は漱石についてだけ書かれたエッセイ集ではありません。漱石とその家族たちがたびたび登場はしますけれど。著者のふだんのつれづれも書かれています。

いちばん心に残ったのは、漱石を師と仰ぐ若き作家たちのたまり場としての「漱石山房」に関する文章でした。

「漱石山房」とは、現在の新宿区早稲田にあった漱石の終の住処となった家の一部、回廊つきの二間で、弟子達の面会日「木曜会」が開催された場所でした。

著者の父親である「松岡譲」氏は、なんとかこの山房を後世まで残せないか、奔走するわけですが、そこで問題が起きます。

「木曜会」が漱石の死後、「九日会」という名前になり、毎月命日の九日の夜、山房にかつての友人、門下生たちが漱石を偲ぶために集まっていました。

松岡氏は、「九日会」に「漱石山房」を買い取ってもらうのが上策だと考え、打診するのですがらちがあきません。

二度、話し合いの場が持たれるものの、誰も「喜んで私たちがいただきましょう」と言い出さない。

ついに鏡子夫人の堪忍袋の緒が切れます。「もう、結構です。いっそ私がこの案を引っ込めたらよいのでしょう」と切り口上で言って席を蹴って退室してしまったそうです。

著者はこれについて以下のように書いています。

松岡は著者『ああ漱石山房』の中で「門下の人達は高名のわりにいずれも財布は軽かったのか」と遠慮がちに書いているが、私は門下の連中は結構良い暮しをしていたのに、そして良い暮しを維持したいがために、単に財布の紐が固かっただけではなかったかと疑っている。

事実はどうなのかわかりませんが、門下生の中でも末席を汚していた松岡氏が漱石の長女と結婚した、ということもこの問題に関係あったのかな、と思うのですが。

これ以外にも、著者はけっこう歯に衣着せぬ物言いをしていますが、こういうことができない私には潔く思えました。

「漱石山房」に関しては、現在新宿区が、漱石生誕150年に当たる平成29年度に、(仮称)「漱石山房 記念館」をオープンさせる予定だそうです。

タイトルの「漱石の長襦袢」ですが、これ




ここに興味のあるかたはこの本をご一読されたし~(^^)。


おまけ: 世田谷で咲いていた「ジンチョウゲ」。「沈丁花」と漢字で書いたほうが良い感じ(^^)。



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