読んでみたら、何ヶ所もそういう部分があり、「こりゃ、どこでも叫ぶかも?」なんて思っちゃいました(^^;)。
なぜなら、たとえば最初の「カステラ」。
主人公の大学生は中古で騒音のヒドい冷蔵庫のことで考え始めるわけです。修理を4回も頼み、自分でも冷蔵庫の原理、構造、そして冷蔵の歴史についてまで学び始めます。
そして中に入れるものについて熟考し、周りの「何もかも入れてみたら?」「本当に大切なものを入れてみたら?」「人類のためを思うなら、世の中の害悪を閉じ込めるのが先決じゃないの? たとえばアメリカとか」というアドバイスを取り入れるわけです。
最初は本、映画、続いては父親、母親! そこからは次々とほう込みます。大学、町役場、はてはアメリカまで!
そしてどうなるかは読んでください(^^)。
その他の作品も「失踪した父親がキリンになって駅のベンチに座っている」「スワンボートが空を飛ぶ」などなど、人によっては「もう読まないよ」になるかも知れない面白い内容の作品ばかりです(^^)。
著者は大学卒業後、さまざまな業種の仕事を経験して、作家の道を進み始めた人だそうです。
この短編集でも、社会でなんとか生き抜いていくためにもがく人々が主人公になっています。だからと言って暗いわけじゃないんですね。どこかに道があるんじゃないか、そうやって努力している普通の人たちを描いていると思います。
私は日本語版を1作品、それの韓国語版を読む、というやり方で読みました。
辞書は引きませんでした。なにしろ日本語訳を読んでから韓国語のほうを読むのですから、内容はすでに頭に入っていますし、なによりも著者の韓国語にはむずかしい単語がほとんど無かったんです。
そして辞書を引くと、文章全体を読んでいるリズムが崩れてしまうので。
著者の文体で面白いな、と思ったのは「정말이지」が多かったこと。
1文が短いから読みやすい。
訳で「ははぁ」となったのは数えきれないのですが、たとえば
제정신이 들었을 땐 이미 하늘나라였다. 어이가 없군. 당연히, 걷잡을 수 없는 후회가 밀려들었다.
という文の訳は↓
奴が正気に返ったときは、もう天国だったというわけ。マジかよ! 当然のことながら取り返しのつかない後悔が押し寄せてくる。
また
헐크 호건의 이두박근과 가슴 사이에 , 설마 겨드랑이 냄새가 심한 우주가 있을 줄이야.
という文の訳は ↓
まさかハルク・ホーガンの上腕二頭筋と胸部の間に宇宙があろうとは、そして宇宙の脇の下がこんなに臭いとは。
になっています。
私なんかが翻訳した場合、こうはならないでしょう。順番どおりに訳した結果、つまらない文章になるのが常ですから(^^;)。
私はまずはこの本を楽しんで読みましたが、読み終えてから、原作と日本語版をひとつひとつ見比べながら再読していくと、翻訳の勉強になること間違いナシ、だと思いました。