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Channel: ハーちゃんの「ゆらゆら日記」
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津島佑子 申京淑著 「山のある家 井戸のある家」

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かなり前に出た本で知ってはいたのに読まないでいました。たまさんのブログの最近の記事を見て図書館から借りた本です。

これは日韓2人の作家が1年間、毎月、自分たちのことばで手紙をやりとりした往復書簡集です。

タイトルは、津島さんの家には古い井戸があり、申さんはソウルの北漢山の近くにお住まいだからですね

内容ですが、「日韓のかくれんぼ」「靖国神社」「家族の話」「戦争について」などなど。もちろん作家として考えることなども。

そして津島さんの「地球上のさまざまな場所で起こっている、こうしたそれぞれのできごと(豪雨、地震、テポドン、テロなどを指している)におろおろしつつも、私自身の日常はささやかなことに追われながら、一日一日過ぎていきます」という文章に共感しました。

また津島さんと私は生まれ年が近いせいか、「電気冷蔵庫もない、冷房装置、洗濯機、掃除機、電話、電気炊飯器もなかった時代に育った」というところも同じなんですね。

「アメリカの家庭雑誌を見るようになったら、そのページに『幸せ』が写っている気がした」という文章には、たぶん主人が「うん、うん」と言ってうなずくと思います(^^;)。

私は申さんの作品は「オンマをお願い」「月に聞かせたい話」しか読んでいないと思います。




「オンマをお願い」や「離れ部屋」には、申さんの家庭環境が映し出されている部分があるんだな、ということが、この書簡集を読んでわかりました。

申さんがご自分のお父上がどういう人だったか書いた後に、津島さんに「よかったらお父様のお話を聞かせてくださいませんか」と頼みます。

それに対して津島さんがお父さんである太宰治について返事を書くのですが、その返事に対して申さんが「書いて下さいとお願いはしたものの、こんなに率直に書いてくださるとは思ってもいませんでした」と書いています。


津島さんにとっての父、太宰治という人は、申さんが言っているように「暗くて重い『秘密』を持つ人」だったんですね。

あとがきで津島さんは「申さんと私は往復書簡の試みを終えた今、おそらく世界のだれよりも親しい小説家の友人として、互いを感じ合っている」と書いています。

この本の中の申さんの手紙は韓国語から日本語に翻訳されたものですが、翻訳者のきむ ふなさんの文章がなんとも素晴らしい日本語なんですね。翻訳とは思えない。申さんが日本語で書かれたかのように感じられる文章でした。

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