小説家、随筆家、俳人、社会学者、漫画家、写真家、詩人などが、あんこについて書いたものを集めた本です。
なんでこの本を見つけたか、と言うと、「武田花」 で検索したらあったので。
武田花さんは、武田泰淳、百合子夫妻の一人娘で、写真家でありエッセイも書いているかたです。
花さんの母親である武田百合子さんのエッセイや日記が大好きなので、そこに登場する花さんのことも他人とは思えません。日記には小さいころの花さんに関する記述も多いので、昔から知っている人、なんて勝手に思っているので (^^;)。
最初の文章が芥川龍之介の 「しるこ」、最後が国文学者で随筆家でもある、岩本素白の 「菓子の譜」。
この 「菓子の譜」 の文中に、新潟名菓 「越の雪」 に触れた一節がありました。岩本さんはお菓子が好きで、折りや箱に貼ってあるお菓子の名前を記した小紙片、包み紙などをとっておく習慣があったそうです。
「越の雪」 については、
越の雪の商標は古風な銅板画で、その店舗の様子を写しているが、その前にある昔の無恰好な黒い四角な郵便箱が面白い
と書かれています。
偶然ですが、最近いただいた羊羹が、この 「越の雪 大和屋」 さんの商品 ↓でした (^^)。
「花霞」 は、白豆を使った羊羹、「胡麻甘味」 は、黒ごまを使った羊羹。3種類のうち、「栗甘味」 は羊羹ではないのかな? ほとんど栗そのもの、という感じで、どれもたいへん美味でした。
すべて美味しかったけど、主人に 「どれがいちばん好き?」 ってたずねたら、ちょっと考えて、「栗かな」 ですって (^^)。
栗のお菓子は手がかかりますよね。蒸すかゆでるかして中身をほじくり出す。あれは大変な作業。
この本にも栗のお菓子の話が載っていて、それは上野千鶴子さんの 「和菓子」 という章。
洛北 (京都の北部) に、丹波栗の季節の3ヶ月間だけ、それも予約のみ、ばら売りはせず10個単位でしか売らない栗かのこがあるそうです。高齢のご夫婦が、大ぶりの丹波栗をゆでて中身をかき出し、べつに炊いた丹波小豆の餡とまぜて茶巾絞りにしただけのお菓子。
美味しそうですねぇ。ただお店の名前は載っていませんから、探し当てるのが難しそう。
この本の後半になると、「粒あん派か、こしあん派か」 という大問題が提起されます (^^)。
たとえば、東海林さだおさんは、「人間の分類の仕方にはいろいろあるが、人間を 『粒アン派』 と 『こしアン派』 の二つに大別しようとしている人類学者さえいる。(ような気がする)」 と言っています。
また荒俣宏さんは、「上品な漉し餡はどうもいけない。あずきの皮が見えていないと、餡を食べた気がしないのだ」 と。
そしてまた林望さんはと言うと、「私はどうでも 『こしあん』 でなければいやである。あの豆の皮を含んだ 『つぶしあん』 というものは、なんだか鬱陶しい」 そうです。
宮沢章夫さんは、「はっきり言明しておく。誰になんと言われようと私は 『つぶあん派』 だ」。
読んでいて笑えてくるくらい、みなさん真剣に 「あんこ」 について語っていらっしゃる。
親子で出ているのは、幸田文さんと青木玉さんでした。
あー、おかしい本でした (^^)。